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「失敗」が報酬となるとき。

夜中に目が覚めたので書いてみました…

When errors are rewarding.
de Bruijn ER, de Lange FP, von Cramon DY, Ullsperger M.
J Neurosci. 2009 Sep 30;29(39):12183-6.

Journal of Neuroscience誌より。
Brief Communicationのためか、かなりCasualなタイトルです。

内容を簡単に言うと、

  • 状況によらず、とにかく「エラー」に反応する領野
  • 状況によらず、とにかく報酬を得たときに反応する領野

がそれぞれ別に存在する、ということです。

ヒトのfMRIで脳のBOLD信号を測定しつつ、簡単なコンピューターゲーム課題をさせます。

(BOLDは脳の血流の酸素化の程度の指標で、その変化はその領域の神経活動の増減に関連すると考えられています。)

ゲームの内容は、画面の上側に出現するターゲットの左右の位置と、画面の下側にある自分のカーソルの左右の位置を合わせるという単純なもので、うまくピッタリの位置に合わせられればお金がもらえるというものです。

そして、この実験では、2人のヒトが同時に実験室にやってきて、自分がトライする試行と相手のトライするのを観察する試行を交互に行うこと、そしてブロックごとに「協力条件」と「競争条件」が入れ替わることを説明されます。

別室に誘導され、お互いの姿は見えないですが、

協力条件では、もう1人の被験者が成功してくれれば自分がお金をもらえて、
競争条件では、相手が失敗してくれればお金がもらえます。

(実際にはこの説明はウソで、2人ともがコンピューター相手に同じ実験をしています。)

つまり、お金がもらえる場合は、

自分のトライで成功したとき
「競争条件」のときに相手のトライが失敗したとき

お金を損する場合は、

自分のトライで失敗したとき
「競争条件」で相手が成功したとき
「協力条件」で相手が失敗したとき

ということになります。

ここで注目すべきなのが、「競争条件」で相手が失敗したときです。
このときは、相手の「エラー」が自分の報酬に結びつくからです。

このような設定で、実際に実験中のMRIの結果を見てみると、

大脳基底核の線条体(striatum)では、とにかく自分がお金がもらえるときに強いBOLD信号の変化が見られました。
特に、「競争条件」で相手のトライを見るときには、相手が失敗するときのほうが、相手が成功するときより強いという結果が得られました。

しかし前頭皮質内側の後部(pMFC)では、どの条件でも、自分あるいは相手が「失敗」するときに強い活動が見られました。
なので、「競争条件」で相手が失敗すれば、やはり強いBOLDが見られました。

と、このように、2人の被験者を使って、相手の行動価値が競争or協力というコンテクストによって異なるという課題を行うことで、エラーそのものをコードする部位と報酬をコードする部位をそれぞれ示したというものです。

********

さて、自分はMRIのことは詳しくないですが、

結果の棒グラフを見ると、先の「競争条件で相手のエラーを見るとき」の結果以外は、全て逆転する結果(correct > error or correct < error)となっています。

ということは、もし「競争条件で相手のエラーを見るとき」の結果が信頼性が低ければ、これら2つの領野はただ単に逆の活動パターンであるというだけになるのですが、ここではp < 0.0001と強い有意差があるようです。

ただ、協力条件で相手が失敗or成功では有意差無し(p = 0.06)ということで、結果を鵜呑みにして結論付けして良いものかというのは少し気になりました。

あと、協力条件のときと競争条件のときで、失敗か成功かに限らず、BOLD信号の変化率にかなり差があるように見えます。これは何故なんだろう。縦軸の目盛りがマイナスまでとってあるので、活動が増強したといってもほとんどゼロとマイナスの変化の比較だったり。

まあそして、当然ながらこのタスクに特異的な活動を見ているだけの可能性もあり(つまり、ただ単にターゲットと自分のカーソルが「離れている」ときだけの活動を見てるかも)、別の実験でも確認される必要はあると思います。

また1試行の報酬は10セント(9〜10円)ということで、お金に余裕があるヒトはそれほど気にならない金額かもとか思ったり。被験者の収入で差が出たりするだろうか。

今までは1人でタスクを行って、エラーのときと成功のときを比較する実験しかなかったのを、2人にして2つのコンテクスト、そしてownとobservedの2条件で行ったというのがおもしろい。

きっともうどこかでやられているだろうけど、実際に電気生理でやっても同じような結果が出るだろうか。

そういうニューロンがあれば、「エラー」という情報に関して自己と他者の区別無くグローバルに表現しているという意味ではミラーニューロン的でもあるんだけど、実際にこういう状況で報酬を予測するにはやはりエラーの情報と報酬の情報という2つの要素が絶対必要なわけで、きっとある気がする。

しかしそれらの統合された認知に近い情報がやはり前頭のニューロンで表現されるとして、その表現は線条体なんかの報酬の表現とどう区別されうるのだろう。もちろんスパイクの立ち上がりのタイムラグとかはあるかもしれないけど、報酬予測は中脳レベルで表現されてるわけだし…

なんかこうやって2者あるいは2匹でやると、おもしろいことができそうですねflair

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異なる感覚への注意。

Anterior cingulate cortical neuronal activity during perception of noxious thermal stimuli in monkeys.
Iwata K, Kamo H, Ogawa A, Tsuboi Y, Noma N, Mitsuhashi Y, Taira M, Koshikawa N, Kitagawa J. J Neurophysiol. 2005 Sep;94(3):1980-91. Epub 2005 May 31.

僕は基本的には視覚を使っているので、少し専門外ではあるのですが、

おもしろいなーと思ったので、紹介しておきます。2005年の論文です。

*********

Anterior cingurate cortex (ACC、前帯状皮質)は、大脳辺縁系の一部分です。

大脳皮質が進化的に新しく新皮質と呼ばれるのに対し、辺縁系は本能などに関係するような、進化的に古くから存在する部分であるとされています。

特に最近は、報酬とのかかわりから、注目されている領野でもあります。

さて、この研究では、熱刺激と光刺激のどちらか一方、あるいは両方が与えられます。

熱刺激のほうは、皮膚に当てたプローブの温度がある温度まであがって、その後ほんの少しだけ温度があがるというもの。

光刺激は、目の前のライトがついて、その後少し明るさが増すというもの。

いずれの条件でもその変化を感知して、ボタンを押すのですが、

ポイントなのが熱と光両方ある条件。

両方のときは熱のほうは途中の温度の変化がなく、光のほうだけ変化があります。

なので、両方のときは(もちろん光刺激のみのときもだが)、サルは光の明るさの変化だけ注意して見ればよいという戦略をとることになります。

ACCのニューロンには、熱刺激に対して反応するものがあり、熱刺激が加えられると活動が増えるタイプと減るタイプがいますが、

重要なのがFig.6で、熱刺激単独では活動が増強していたのが、熱+光のときは活動が弱くなっています。

これらの条件間では、光刺激のあるなしは違いますが、同じ熱刺激が加えられているにもかかわらず。

ここから、ACCのニューロンが機械的な感覚情報ではなく、注意に基づき、痛みを知覚するための役割を持っているという結論です。

**********

ACCニューロンが痛み刺激に反応すること、また注意によりmodulationを受けることはこの研究以前から示唆されており、またこのタスク自体も以前からあったもののようですが、

ニューロン活動が熱刺激の強度、そして注意の大きさ(?)に応じてはっきり変化する様子がわかるのがおもしろいですね。

試合に集中してたら痛みを感じない、とか、そういうことでしょうか。

discussionのところはあまり納得できない点がいくつか。。

increasingタイプとdepressiveタイプは、ただ活動のベクトルが逆なだけであって、機能が異なるかどうかわかんないと思うし。

そして本題。

あまりawarenessという文脈では語られていないのだけれど、そういう視点で見るとなんかおもしろい気がする。

注意によって活動が変わるという点では、べつにbinocular libaryなんかといっしょじゃん、と言う感じもするけど、

この熱刺激に対するニューロン活動っていうのは、受容野というかresponse fieldはほとんど全身であることもあったりするらしく、それなら

このニューロンがコードしてるのは、「熱い」という感覚そのものじゃないか?

もちろんそのニューロン1つが死んだからって熱さを感じなくなるわけではないけれど、

NCCとか、そういうものに近いんじゃないか?

ここまで来ると、attentionはperceptionそのものなのか?うーんtyphoon

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文献紹介の日。

僕の研究グループでは毎週金曜日に恒例の抄読会(文献紹介)があるのですが、今日は人が揃わなくて中止だったので、ここで紹介したいと思いますtyphoon簡単めに。

Dynamic Encoding of Responses and Outcomes by Neurons in Medial Prefrontal Cortex

Luk CH and Wallis JD, J.Neurosci, 2009

これは、自分の行動(Response)と結果(Outcome)がどう結びついているのか(RO association)を評価し、次の行動へ還元するための仕組みの研究です。
MPFC(前頭前野内側部)とLPFC(前頭前野外側部)からニューロンを記録しています。
MPFCは、先行研究から、報酬系との解剖学的結合も強くRO associtationに重要なことが示されています。しかし、先行研究では報酬のあるorなしの2値のみで調べられていて、そのニューロン活動が特定の報酬をコードするのか、あるいはもっと一般的な報酬価値を表現しているのかわかりませんでした。
また、LPFCのほうはというと、今まではルール変更やワーキングメモリに関する研究がメインで、RO associationに関係しているかどうかははっきりしていませんでした。
そこで、今回は、特にRO associationに重点を置き、MPFCとLPFCを比較しながらその役割を調べています。

被験者のサルに行わせた課題を簡単に書くと、
1、    レバーを右に倒すとリンゴジュースが少し出る(右=リンゴ)
2、    次に、レバーを左に倒すとオレンジジュースが少し出る(左=オレンジ)
3、    好きな方にレバーを倒す→右ならリンゴ、左ならオレンジの、上記の2倍量のジュースを得る。
で1トライアル。1,2がサンプルで、3がチョイスとなります。
ジュースは3種類(オレンジ、リンゴ、キニーネ(=薬))で、サルははっきりとした好みを持っていて(Fig1C)、そこからランダムに2つがサンプルになります。
サルは好きなジュースをたくさん得るために、レバーの方向(Response)とサンプル(Outcome)の関係(RO association)を記憶しておく必要があります。

最初のサンプルが出る前、1回目のレバー押しでサンプルを得たとき、2回目のレバー押しでサンプルを得たとき、そして最後にチョイスでジュースを得たときのニューロン活動を主に解析しています。

まず、1回目のレバー押しでサンプルを得たときの活動を見ると、2種類の反応が見られました。1つめはResponseタイプで、レバー押しの方向によって活動が変わるもの(Fig3A)、2つめはOutcomeタイプで、ジュースの種類によって活動が変わるもの(Fig3B)、そしてもう1つはResponse-Outcome interactionタイプで、両方の要因で活動が変わるタイプ(Fig3C)です。課題の遂行にはResponseとOutcomeの両方の情報が必要となりますが、MPFCでは両方のタイプのニューロンが同じくらいの割合で存在していたのに対し、LPFCではOutcomeタイプが少ないということがわかりました(Fig3A~C)。

Outcomeタイプの特徴として、嫌いな順に活動が高くなるニューロンが多かったのですが、2回目のサンプルのときにも同じように活動するものはわずかでした。
Responseタイプは方向選択性の強さを示すdirection indexを計算して解析し、1回目のレバー押し方向と最初のサンプルが出る前の活動で相関があることがわかりました。しかしこれはチョイスのときまでは続きませんでした。

これらの結果から、MPFCはRO associationに必要な情報を表現しているが、最終決定の過程は別の部位で行われていることが考えられました。

次に、2回目のサンプル期間についての解析では、1回目のサンプルのジュースが好きなものだったとき、2番目に好きなものだったとき、3番目だったときの3パターンにわけて調べました。
この期間の活動をみると、Fig7Aのようにキニーネのときに活動が高くなるもの、Fig7B,Cのように嫌いな順に活動が高いもの、Fig7Dのようにサンプル2つの組み合わせに特異的に活動するものが見られました。トータルでみると、1回目のサンプルが2番目に好きなジュースだった場合に2回目サンプル期間の活動が強くなる傾向が見られました。これは、1回目のサンプルがもし1番好きあるいは1番嫌いなものであればその時点でチョイスが決まるのに対し、2番目に好きなジュースだった場合、2回目のサンプルを吟味することが重要になるからだと考えられます。

そして次にチョイス期間の活動の解析ですが、ここではチョイスのときのジュースの量を変え、たくさんジュースが出るトライアル(Large reward)を混ぜます。ジュースは細い管から同じ速度で出るので、Largeのときには2倍の時間ジュースが出ることになります。サルはLargeかSmall(ふつうのトライアル)か予測できません。
ここで、Smallのジュースが出終わった直後の期間(Small-offset)に、活動が大きくなるニューロンが多く見られました(Fig8B)。このSmall-offsetでの活動はサンプルのときと同じくらい強かったです(Fig8E)。
また、サンプルのときと同様にジュースの種類を表現するニューロンもありましたが、ここではサンプルのときと逆で、好きな順に活動が強いものが多く見られました(Fig8A,C)。

この結果から、サンプルの期間、そしてSmall-offset期間という、覚える必要性が高い期間の活動が高いことがわかります。

Fig9は解剖学的な解析。LPFCではResponseタイプは後方に多く、Outcomeタイプは傾向みられず。MPFCでは特に傾向がありませんでした。
また、MPFCの後方を新たに記録し別に解析したところ、LPFCと同じようにResponseタイプの割合が高いことがわかりました。

以上、結論としては、MPFCは行動とそれによる報酬の価値のモニタリングにおいてLPFCより重要であり、行動(およびエラー)の評価、意志決定のプロセスに貢献している、ということです。

***********
報酬の価値を表現するニューロン活動がサンプルとチョイスで逆転していたのは何故なのでしょうか。そしてMPFCで別々のニューロン集団によって表現されたResponseとOutcomeの情報はどのように統合され維持されるのでしょうか~spa

最近は、前頭前野(PFC)でも内側を扱った研究が多いですね。上記のような報酬系との関係に加え、時間のコード、行動のタイミングなど。
LPFCとMPFCは、階層的に報酬の情報を処理しているのではないかという報告もあり、気になるところです。

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「不思議の国のアリス」症候群

「モノが突然大きくなったり、小さくなったり、ひとりでに動き出したりするのが見えるの…ある日、妹の読んでいる本が突然大きくなったかと思うと、またある日には、お父さんが人形みたいに小さくなってしまったりするの…その他にも、人形の足がぶらぶら揺れたり、窓のブラインドがひとりでに上下に動いたり…」
Alice in Wonderland syndrome as persistent aura of migraine and migraine disease starting Carames et al., Rev Neurol, 2009)

まるでホラーの世界の話のようですが、これは、とある8歳の少女が体験した世界です。

この少女のように、モノの大きさが極端に違って感じられたり、変形して見えたり(メタモルフォーゼ)、時には自分の体の大きさが変化したように感じられるというのが、ルイス・キャロルの小説になぞらえて「不思議の国のアリス症候群Alice in Wonderland syndrome(AWS, AWIS)」と呼ばれているものです。

幻覚の一種と考えられていますが、実際に現実に存在しているモノの大きさや動きが変容して見られるというところが特徴的です。

この「不思議の国のアリス症候群」は、1952年にLippmanによって最初の報告がなされ、1955年にToddによってネーミングされました。

ガリバー旅行記に出てくるコビトであるリリパット人(Lilliputian)から、Lilliputian syndromeとも呼ばれたりするようです。

扁桃炎などの原因としてポピュラーなEBウイルスや、コクサッキーウイルスなどの感染症に伴って小児期に一過性に見られることが多いようですが、時に長期化し、大人になっても遷延性に症状が残る場合があるようです。
その場合特に片頭痛やてんかんとの合併例が多く報告されており、画家の中にはこの疾患のために独特の画風で有名になった人もいたと言われています。また、薬物によっても引き起こされる場合があるようです。

下の絵はAWSの患者さんの描いた絵です。自身の身体イメージ、モノの大きさ、時間の流れなどが異常に感じられていることがわかります。

Aliceinwonderlandsyndrome

一説によれば、ルイス・キャロルも片頭痛持ちであったことから、自身もこの疾患だったのではないかと言われています。

眼科的な基礎疾患を持つものを除き、一般的には検査所見に乏しいのも特徴ですが、MRIで頭頂葉や基底核での異常信号が見られたという報告もあります。

虫メガネで覗いたように、モノの一部が引き延ばされて見えるということなら、眼科的疾患あるいは初期の視覚野の異常が主に考えられるでしょうが、本だけが大きく見え、本を持つ手は正常な大きさに見えるなら、何らかの機序で大きさを知覚する系が選択的に障害されているのかもしれません。

また、自分の身体の一部が大きくなったり小さくなったりして感じるというのは、ボディ・イメージの知覚の異常であるので、厳密には同じ機序でない可能性もあります。

名前からして、不思議な疾患ですbud

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SNr→SC

久し振りに論文読んでみたのでメモですsun

Substantia nigra stimulation influences monkey superior colliculus neuronal activity bilaterally.

(黒質の刺激により上丘は両側性に影響を受ける)

Liu P, Basso MA.

SNr(黒質網様部)の電気刺激により、SC(上丘)のニューロンの抑制が強化され、サッカード(急速眼球運動)が影響を受けたという話です。
SNrとSCへのdirect projectionの機能、そしてSNrから対側SCに投射する経路についてあまり調べられていなかったということで調べてみたということです。

substantia nigra(黒質)は、脳の中でも奥のほう、脳幹の上あたりにある神経核で、大脳基底核basal gangliaの1つです。
Brain_structure_3  
大脳基底核の重要な役割として、抑制性の信号を視床や大脳皮質などに送ることにより、運動などを抑制性にコントロールするということが挙げられます。
黒質は網様部(SNr)と緻密部(SNc)に区別され、SNrはこの大脳基底核の出力部です。
Basalgangliaclassic
一方、superior colliculus(SC; 上丘)は、視覚経路の中でも一次視覚野へ向かう経路とは主に別系統で投射を受け、意識下に眼球の運動を制御しています。SCのニューロンには、サッカード(急速眼球運動)に先立って発火する、buildup neuron (prelude neuron)と、サッカードが開始してから発火するburst neuronがあります。
buildup neuronはまだ眼球が動いていないときに既に発火を始めているので、サッカードの準備に関わっていると考えられます。

この研究では、このSCのbuildup neuronの神経活動が、SNrの電気刺激によってどう影響されるかが調べられました。

実験課題として、visually guided delayed saccade taskが用いられました。これは、targetが出現してもfixation point (FP)を固視し続けなければならいことが教示され、FPが消えたことがcueとなり、そこで初めてtargetへ眼球運動するというものです。

この研究ではこのdelayed saccade taskでcueが出た瞬間(=FPが消えた瞬間)にSNrの電気刺激を開始します。

結果としては、SNrにelectrical stimを加えたときに、加えないときより有意なSC buildup neuron発火頻度の低下が見られました。
しかも、片側半球のSNr刺激で、両側半球のSCにおいてbuildup neuronの抑制が見られました。
また、サッカードそのものに関して、潜時は長くなったものの、眼球運動の速度、到達地点などに有意な変化は見られませんでした。

発火頻度の減少が単純にサッカードを抑制したりサッカードの大きさ(振幅や速度)を減少させるわけではなかったことから、SNrは考えられているより複雑にSCを制御していることが示唆されました。

***************

僕の興味はより高次の機能にあるのですが、こういった論文を読んでいると、例え高次機能に関するテーマでも、基底核やら辺縁系やら小脳やら、必ず絡んでくるから、関係性をしっかり吟味しなくてはならないんだなーと気付かされますflair

あ、卒試無事にpassしましたnotes  たぶんギリギリです。きつかった〜sweat01

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トップダウン型注意と神経活動のシンクロ

とりあえず今回の実習ラストの抄読会用論文をまとめますsweat01

<Neural Mechanisms of Visual Attention: How Top-Down Feedback Highlights Relevant Location>
Yuri B. Saalmannら
『視覚的注意の神経メカニズム: トップダウン型フィードバックはどのようにして関連位置を目立たせるのか』

注意(attention)は、私たちの日常で行動に関連する対象に対する感覚反応を選択的に増加させ、重要なものを目立たせることができます。
注意には『特徴に基づく注意(feature-based attention)』と、『空間的位置に基づく注意(spatial attention)』があります。
このプロセスで重要なのが、トップダウン型の信号(トップダウン・フィードバック)です。
このトップダウン・フィードバックにより、低次の視覚部位の活動に制限をかけ(gating)、有用な情報に対する反応を際立たせるのです。

本研究において、著者らは、このフィードバックが起こる過程を実際に見るために、視覚経路の高次の部位である後部頭頂葉の一部LIPと、低次の部位であるMT野から神経活動(LFP; local field potential,および single neuron)を同時に記録し、注意課題中に2つの領野がシンクロして活動するタイミングを調べました。視覚経路としては、V1(一次視覚野)→MT→LIPとなります。

実験に用いた課題(task)は、delayed match-to-sample(DMS)というものでした。
これは、まず1つ目の刺激が画面に出て(S1)、インターバル(delay period)の後に2つ目の刺激(S2)が出現し、S1とS2が両方とも同じ位置、同じ模様であればボタンで報告するというものです。模様はタテジマかヨコジマの2種類、位置は右上、右下、左上、左下の4ヶ所に出る可能性があり、それぞれランダムに出ます。

このとき、S1が受容野(RF)に出てかつ模様の向きがニューロンの好みの向き(preffered orientation)であった場合に、S1とS2で位置と模様がマッチしていれば、 "spatial and featural attention"条件であるとします。S1が出た後、S2が出るまで、空間的および特徴的な注意が向くからです。
S1がRFに出て好みの向きで、S2もRFに出るが模様が異なる場合を、"spatial attention"条件であるとします。そのニューロンはS1に対して空間的注意は向けられるものの、好みでない模様に対しては反応できないからです。
S1がRFの外に出現した場合、"attention elswhere"条件とします。空間的注意を向けられないからです。
また、S1が出現したときにS1がRFで好みの模様である状態を、"neutral"状態といいます。これはS2が出現する前の段階でのことを指し、例えばneutral状態でS2がRFで好みの模様ならspatial and featural attentionといいます。

Fig.2~4で結果が示されています。
まずFig.2について、
単一の神経細胞の活動の記録(single neuron)を見ると、最初の刺激S1が出たとき、S1がRFである条件(spatial and featural attention, spatial attention)では当然、神経活動が起こります。ここでdelayの後、S2が呈示されると、spatial and featural attention条件ではさきほどのS1呈示のとき(neutral状態)より有意に大きな活動が起こります。
刺激の大きさや色などはS1とS2で同じなのに、です。この大きくなった活動が、注意による活動だといえます。また、delay periodの間も、S2呈示に向かって徐々に活動が増加しています。

続いて、LIPとMTの神経活動(スパイクのタイミング)がどれだけシンクロしているかを表す指標としてcoherenceというものを用い、coherenceの強度を色で視覚的に表したのがFig.3です。
spatial and featural attention条件とspatial attention条件で、S2の呈示の前後でcoherenceが増大しています。coherenceの増加はdelay period中に始まり、S2呈示中から呈示後にピークになっています。
attention elswhere条件では、このようなcoherenceの増加、つまりLIPとMTのスパイク発火タイミングのシンクロは見られませんでした。
これより、attention条件においてLIPとMTがdelayの間に同期発火の頻度を増して行き、行動に関連する刺激への反応を増強していく過程がわかります。

そしてFig.4。まず、Bの図から、attention条件において、LIPの活動に続いてMTが活動するということがわかります。

その他の図からは、LIPでは25~45Hz付近での同期発火がattention条件のときに有意に大きくなることがわかります。またLIPとMTでcoherenceが大きいのも、やはり25~45Hz付近ということがわかりました。
25~45Hz付近の周波数帯は、ガンマ周波数帯(gamma-frequency range)と呼ばれ、ガンマ周波数帯でのシンクロが、脳内で情報処理を行う際に出現することが報告されています。
今回の結果は、top-down attentionのfeed-backにこのガンマ周波数帯のスパイク同期発火が関与しているということを示唆します。

先行研究において、視覚の背側経路(dorsal pathway)はspatial attentionに関与し、腹側経路(ventral pathway)はfeature-based attentionに関与するといわれてきました。
しかし今回の研究で調べられたLIP(dorsal pathwayの一部)は、刺激の特徴に対しても選択性を示しました(Fig.2で、featureがマッチしているときとマッチしていないときで差があったことから)。
このことに関する仮説として、LIPがventral pathwayからshort cutを使ってfeature-basedの情報を受け取っているという可能性や、LIPはMTを介してV1にまでfeed-backで働きかけ、V1において特徴によるgatingを起こしている可能性が考えられます。

以上です。

ニューロンたちが同期発火しながら他の脳部位と情報をやりとりする…

まるで糸の途中に吊り下げられたいくつかの振り子の中で、同じ長さのひもで出来た振り子だけ共振するような…

おもしろいですeyeglass

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ルールのアップデートに特異的な神経活動

さて、夏休みを利用した京都での実習も終盤に差し掛かってきました。
単なる見学者の身分で研究室のデスクを完全に占拠して、勝手に棚を置いたりポストカードやら置き物やら置いて自分の机にしてますsnail
パソコンの設定も全部自分の使いやすいように変えたしpc
京都用に置きチャリも買って、物件も少しずつ探し始めたりbicycle
先生も、『あとは院試に通るだけだな』、と。 まあそこが一番重要なとこですけど笑

今日は休日なので研究室もがらんとしています。最初のイメージでは、『研究者って研究室に住み込みで、ほとんど寝ないで研究してるんだろうな〜』と思っていたんですが、聞いてみると『まあ忙しいときとかもあるから、そういう人もいるかもしれないけど、基本的に時間を自由に使えるから、好きなときに出て来て好きなときに帰れるよ〜』とのことでした。
ただ、医者と違ってほとんど結果がすべての世界なので、長い時間働けば給料や職が手に入るとは限りませんし、逆に要領よく短い労働時間でも結果を出せばその後につながっていきます。

自分の場合はあまり要領がいい方ではないので、まあたくさん時間をかけてじっくりやろうと思いますがdespair
でもon/offはきっちり切り替えて、趣味や遊びの休息も適度に取りながら、楽しくやっていきたいですup

昨日は先生の車で琵琶湖までドライブに連れて行ってもらいました。琵琶湖って小学校の教科書で見た『工業化による汚染』とか『バスフィッシングの影響で生態系が破壊』とかそんなイメージしかなかったんですが(滋賀の人ごめんなさい)、実際行ってみるとヨットがたくさん出てて、すごく綺麗でびっくりしました。湖畔にはおしゃれなカフェもあったりして、とてもいいところだと思いましたyachtshine

あんな素敵なところに住んでたら、勉強なんてやる気なくなりそうですsweat01

あ、今日の抄読会の論文のまとめを書きます。

<Differential Neural Activation for Updating Rule versus Stimulus Information in Working Memory>
Caroline A. Montojoら
『規則の更新とワーキングメモリーに含まれる刺激の情報における、異なる神経活動』

私達ヒトは様々な『ルール』に従って生活しています。ルールとは、『if〜、then〜』というふうに一般化することができるものであり、例えば『信号が赤なら、止まる』というように明示的に表現されるものや、『職場で初対面の人に会ったら、挨拶と自己紹介をする』というように、教示されなくとも経験的に学習するルールもあります。

先行研究においては、ワーキングメモリー(作業記憶)によって維持されコントロールされるものとして、刺激の特徴(言語的、視覚的)が扱われてきました。
一方で、ルールというものも、特にルールが次々と変わっていく場合には、その維持とコントロールが先の行動に影響するという性質を持ちます。
またPFC(前頭前野)には、刺激の情報に特異的に活動するニューロンと、ルールに特異的に活動するニューロンが、同じ部位で確認されました。
これらの研究より、ルールと刺激の情報とは、どちらもワーキングメモリーによって維持される同じタイプの情報を、単に別の側面から見ただけじゃないのか、とも考えられました。

あるルールの中には、言葉や物体、方向など、様々な刺激情報が含まれます。
ルールという情報を調べるとき、その中には常に刺激の情報が含まれてしまうということが、このルールというものの働きを調べることを難しくしています。

そこで今回の研究では、fMRIを用いて、『ルールの更新と刺激情報において異なる神経活動が見られるか、そして先行研究におい示されたPFCのネットワークはどのタイプのワーキングメモリーに関与するのか』ということを調べました。

タスクですが、被験者に暗算してもらう課題を与えました。

<reminder screen>
47 ADD(足し算)
53 SUB(引き算)
このように2つの数字と2つのルールがまず画面に呈示されます(reminder screen)。どちらかの数字とルールが赤で、残りのセットは黒になっており、赤いほうの数字とルールのセットが次の試行に適応されます。
※ここで『ルール』とはADDかSUBのことを指し、『数字』は47か53のことを指します。『ルールの変更』とは足し引きの条件が変わることで、数字はそのままです(足し引きする数字が変わるのも一般的にはルールの変更ですが、ここではそういう規則です)。

<CUE>
次のスライドでは、CUEが出されます。キューの種類は以下の4種類です。出現割合と例を同時に示します。
“HOLD”(40%)→前の試行(reminder screenの直後ならそれ)のルールおよび数字を適応する(47ADD→47ADD)
“NMBR”(20%)→前の試行とルールは同じで、数字だけ変える(47ADD→53ADD)
“RULE”(20%)→前の試行と数字は同じでルールだけ変える(47ADD→47SUB)
“BOTH”(20%)→数字とルール両方変える(47ADD→53SUB)

<Calculation>
この次に、画面中央に1つの数字が示されます。例えとして11とします。

<Answer screen>
その後、4つの数字が出るので(64、58、36、48)、被験者は先ほど記憶したルールと数字に従って、暗算します。例えばルールがADDで、数字が47なら、11に47を足して、答えは58となりますので、対応するボタンを押します。ここで数字が58でルールがSUBなら、53から11を引いて答えは42となります。

この後再びCalculationとAnswerのピリオドがあります。さっき11だった数字は別の数字になり、Answer screenの数字の組も変わります。
このように2回計算をしたら1試行が終了です。
この後再びCUEが出て、ルールや数字が変わるか、そのまま(HOLD)となり、暗算を続けます。

この課題の特徴としては、条件が変わる場合(updating condition)であるNMBR, RULE, BOTHの条件と、変わらない場合(HOLD condition)とを対比して見ることが出来るということ、
そしてNMBR updatingとRULE updatingを対比することで(刺激情報と比較して)ルールの更新に特異的な神経活動を見ることが可能であるということです。

そのため、被験者にはルールの変更をきちんと把握した上で課題を遂行させる必要があり、ルールを忘れてわからなくなった場合は速やかに解答を停止することを教示し、また被験者が当てずっぽで答えにくいよう、Answerの配列には、他のルールを用いた場合の答えとか、1の位だけ計算しようとするのを防ぐため10の位だけ違う答えなどを混ぜました。

結果ですが、Answer screenが呈示されてから答えのボタンを押すまでの反応潜時について、HOLD, NMBR, RULE, BOTHで有意差は見られませんでした。
当初の予想としてはHOLDに比べてrule updating conditionであるNMBR, RULE, BOTHの方が難しく反応が遅れる可能性もあると考えましたが、そうはなりませんでした。
また、正答率についても、HOLDとrule updating conditionの間に有意差は見られませんでした。
反応潜時および正答率どちらでも、NMBRとRULEに差は認められず、これらのデータからは、ルールによるタスクの難易度の変化と刺激(数字)によるタスクの変化に差がないということになりました。

しかし、fMRI(機能的MRI)のデータを見てみると、条件間で差が見られました。

Fig.3では、updating conditionにおいてHOLD conitionより活動が大きい部位が示されています。
具体的には、left and right intraparietal sulcus(IPL), superior parietal lobule(SPL), left inferior frontal junction(IFJ), left inferior frontal gyrus(IFG), left middle frontal gyrus(MFG), presupplementary motor area(pre SMA)でした。
つまり、頭頂や前頭で、条件のupdatingに関する特異的な活動が見られたということです。
このことから、ルールの更新と刺激情報の更新の双方に共通のネットワークが、前頭と頭頂に存在すると言えます。

Fig.4では、RULEとNMBRの差を比較しています。ここでleft IPSおよびpre SMAではfMRI上NMBR>RULEの活動が見られ、left IFJにおいてはRULE>NMBRの活動が見られました。このことから、IFJはルールのupdatingに、IPSは刺激情報のupdatingに特異的に関わることがわかりました。
また、ピリオドごとに活動を見ると、CUEピリオドにおける差が顕著で、CalculationやAnswerのピリオドでは有意差は見られず、CUEピリオドの時点でルール変更による影響を処理していることがわかり、またグラフ上BOTHのときの活動が、これらの部位ではNMBRとRULEを単純に足し合わせた結果でなく、それぞれどちらかの値に近いことから、これらの部位ではNMBRかRULEのどちらかに特化して処理を行っているとわかりました。

まとめると、intra parietal sulcus(IPL)は刺激情報のupdatingに、inferior frontal junction(IFJ)はルールのupdatingに、そしてinferior and middle frontal gyri(MFG, IFG)やsuperior parietal lobule(SPL)はルールと刺激情報の両方に、それぞれ対応してワーキングメモリーを維持しコントロールしているということになります。

ルールと刺激情報、それぞれの更新は、ワーキングメモリーとして同じようなネットワークで維持され、コントロールされます。
しかしその処理を行う場所は完全に同じというわけではなく、前頭にはルールに特異的な部位が、頭頂には刺激情報に特異的な活動をする部位が発見されました。同時に前頭や頭頂に両方で活動する部位も見つかりました。

ただし、異なる神経活動が起きているからといってそれらが別々の表現であるとは限りません。例えばIT野では『方向』『角度』『位置』などが別々のニューロンで表現されていますが、それらニューロンの個数の組み合わせによって一つの図形が表現されることがわかっています(population code)。
今回の研究では、ルールと刺激情報は同じ表現の別の側面である可能性もあるが、ワーキングメモリーによるコントロールをされる異なるタイプの情報であるということがわかりました。

以上です。



ワーキングメモリーは、長期的な記憶とは異なり、目の前の情報を処理するために一時的に保持されすぐに消えて行く、過渡的な記憶のことです。
例えて言うなら、サイフみたいなものでしょうか?
長期的にしまっておくお金は銀行に預けて必要なときにATMで引き出しますが、
少しのお金のやりとりならサイフに入れておいてそこからまた出して使えばよいです。
でも、扱っているものは同じお金なわけです。
WMに関していくつかの理論が提唱されており、自閉症や注意欠陥多動性障害、人工知能の研究にも応用されています。

ワーキングメモリーを理解するために2冊の本を借りました

clip『前頭葉の謎を解く』      船橋新太郎 著 (京都大学学術出版会)

clip『エモーショナル・ブレイン』  ジョセフ・ルドゥー 著 (東京大学出版会)

今から読みます~book

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Don't look neuron

あ゛づい゛ですね〜wobbly
毎日汗だくでチャリこいで通学してますrun
涼しいとこ行きたい~snow

さて、今日の抄読会のために読んでいる論文のまとめです。
この論文に出てくる ”don’t look neuron” は、先の神経科学大会のときに先生が話していたのですが、知らなかったので、勉強です。

<Prefrontal Neurons Coding Suppression of Specific Saccades>
Ryohei P. Hasegawa, Michael E. Goldbergら
『特定のサッカードにおける抑止をコードする前頭前野ニューロン』

前頭葉の損傷や発達障害により、不適切な行動や自分でも望まない行動を抑止できなくなってしまうことが知られています。
こういった前頭葉障害による症状について、古くは1848年から報告があるのですが、これまでの前頭葉の研究は、動きをつくる働きについてのものが大半で、その抑止suppressionの機能についてはあまり関心が払われていませんでした。

ヒトのみならずサルにおいても、行動の抑止は社会行動上重要です。サル社会においては、オスザルは他のオスの目を見てしまうとケンカになるので、見ないようにしないといけません。

これまでにもgo/no-go課題を使用した研究において、前頭眼野(rontal eye field, FEF)において、no-go条件でのみ活動するニューロンの報告がありました。
(*go/no-go課題…最初に出現する画面中央の点の形や色の違いが指令となり、go条件では後に出るターゲットに対して眼球運動をする。no-go条件では、ターゲットが出ても中心点を固視し続けなければならない。)
またサッカードsaccade(=急速眼球運動)を起こすときとfixation(固視)しているとき、それぞれに対応する活動をもつニューロンも報告されています。
(*サッカードsaccade…ある対象からある対象へ、スタートから目的地まで一気に素早く動く眼球運動。たとえば、電車の窓から電柱を眺めているときのように。それに対して、たとえば飛んでいる鳥を目で追うときのように滑らかで連続的な眼球運動をスムースパシュートsmooth pursuitという。)

しかし現実世界においては、『saccadeを起こすか、fixationするか』という枠組みのみで私たちの視覚的注意過程を説明するのは無理があるように思えます。
実際の視覚的選択、注意というものは、『眼を向けるべきものはどこか、また眼を向けないでおいたほうがいい場所はどこか』と常に心の中で取捨選択し、積極的な選択と、積極的な抑止とを組み合わせて、眼球を動かすという、ダイナミックな過程であると言えます。

この研究においては、2つの特徴的な課題taskが用いられました。
1つ目は "Match"タスク、2つ目は"Non-match"タスクです。

<Match>
①Fixation;fixation point(緑色)が画面中央に出現。
②Sample;"□"(白い四角)が周辺視野のどこかに出現。ここではそれに注意は向けるものの、眼球運動はせず、まだ中心を固視する。
③Delay; Sampleが消え、再び中心の点のみ残る。それに続いて1000~1500msのDelay期間。ここでもまだfixationを続ける。
④Test;Sampleと同じ位置に再び同じ"□"が出現。同時に他の場所にも同じ  形・大きさの"□"が出現。2つのうち、Sampleと同じ位置にあるターゲットに向かって眼球運動する。成功するとジュースがもらえる。

<Non-match>
①Fixation;fixation point(赤色)が画面中央に出現。
②Sample;"□"(白い四角)が周辺視野のどこかに出現。ここではそれに注意は向けるものの、眼球運動はせず、まだ中心を固視する。
③Delay; Sampleが消え、再び中心の点のみ残る。それに続いて1000~1500msのDelay期間。ここでもまだfixationを続ける。
④Test;Sampleと同じ位置に再び同じ"□"が出現。同時に他の場所にも同じ形・大きさの"□"が出現。2つのうち、Sampleと異なる位置にあるターゲット(Non-matchなターゲット)に向かって眼球運動する。Sampleじゃない方のターゲットに眼球運動できたら成功。Sampleの方を見てしまったら失敗。成功するとジュースがもらえる。

これらの課題を行っているとき、サルの心の中はどんな状態でしょうか?
Matchでは、緑の点が出たときに、『これはMatchタスクだ、次に出るSampleの位置を覚えておいてそっち向きに眼を動かせばジュースをゲットできる』と考えるでしょう。
またNon-matchでは、赤い点が出たときに『これはNon-matchタスクだ、次に出るサンプルの位置を覚えておいて、間違えてそっちにサッカードしないように気をつけよう!』と思うはず。

さて、これらの課題を行いつつ、ニューロン活動をモニターしたところ、タスクに対して反応があったニューロンのうち、およそ80%のニューロンは、MatchとNon-matchのどちらにおいても同程度の強い活動を示しました。しかしその他に、それぞれの課題において特徴的な活動パターンを示すニューロンが2種類見つかりました。

1つ目は、Matchタスクにおいては活動するのに、Non-matchタスクにおいては活動が抑止されていました。
もう1つは、Non-Matchタスクにおいてのみ活動し、Matchタスクにおいては活動が抑止されました。

これらの特徴的な活動パターンを示すニューロンたちは、それぞれ"Look neuron"、"Don't look neuron"と名付けられました。
これらのニューロン群の活動は、Sample刺激が出現した時点から始まります(Fig.2A,B)。この時点で、サルは先に与えられた情報(fixation pointが赤か緑か)からタスクの種類を判断し、Sampleに対する行動をどう取るべきか、判断し計画を立てていると言えます。

次に、Look neuronとDon’t look neuronそれぞれの活動をより細かく見てみます。

まずLook neuronは、Sample刺激が消えた後のDelayの期間にどんどん活動が強くなっていき、Test刺激が出てサッカードを起こすまで活動は増加し続きます(Fig3A)。またSampleが出る方向に強い方位選択性spatial selectivityがあり、そのニューロンの好む方向へSample刺激が出るとき、かつそのときの課題がMatch条件であるときに、最も強く活動します。
Non-match課題においては活動は弱くなります。
これはつまり、ニューロンが『あ、Match条件で自分の好む方向の刺激だ、サッカードを起こすための準備をするぞ!』という状態になっていることを示します。なのでこのLook neuronは、サッカードの準備に強く関わっていると言えます。しかもFig3Bの下の図から、サッカードする方向についても、方位選択性を持っていることがわかります。Non-matchでは方位選択性も失われ、活動も弱いことから、このLook neuronは、好みの方向に現れた刺激がサッカードすべき目標になるという条件のときにのみ特異的に活動するニューロンであると言えます。

次にDon’t look neuronですが、こちらはMatch taskでは活動が弱いのに対しNon-match taskで活動が強く、DelayからTest刺激の出現、サッカードが起こるまでどんどん活動が増強していきます(Fig3C)。
こちらはSample刺激に対しての方位選択性はありますが、サッカードの方向に対しての方位選択性はありません(Fig3D)。
つまり、Don’t look neuronはNon-matchタスクにおいて、Sampleが見てはいけない方向のものだと認識し、サッカードに向けて活動を増強していき、『自分の好む方向へのサッカードを抑止する』信号を強め、他の方向へのサッカードをスムーズに行う手助けをすると考えられます。Matchのときには活動が強くならないということから、サッカードの運動そのものを手伝っているわけではないということがわかります。『ある特定の(そのニューロンが好む)方向を見ないように、suppression signalを送る』のがDon’t look neuronの役目だと言えます。

あと、最初に出てきた『MatchでもNon-matchでもSampleで活動するニューロン』について述べます。Sample period(①)では80%を占めていました。
その中でも、delayで反応が落ち、testのとき再び反応するものは、これは単純に視覚刺激がそのニューロンの受容野に出現したことによって反応し活動しているので、Pure visual neuronであると言えます。
もしdelayで反応が減少していき、testでも反応が増強しなければ、visual-memory neuronであると言え、working memory(作業記憶)を担っていると考えられます。
また、Sampleのときはタスクに関係なく反応していたのに、その後DelayからMatchに選択的に反応し、サッカードが起きるまで活動が増強するvisual-look neuronや、逆に途中からDon’t look neuronみたいにNon-matchに選択的に反応し出すvisual-don’t look neuronもありました。
このようなニューロンの存在から、Sample periodでは80%がvisual neuronだったのに対し、Delay periodの後半ではLook neuronやDon’t look neuronの割合が増えています。

課題を失敗したときの結果を集めてみると、Look neuronもDon’t look neuronも、成功するときとミスするときではDelayのときから活動の強さに差が見られました。
これは実験者側としてニューロン活動からその試行の成績を予測できることを意味します。このようなミスのときに活動が低いということは、no-go課題を用いた実験では見られなかったことです。

このように、前頭葉では単に運動を計画しているだけでなく、同時に不適切な運動の抑制を行い、状況に応じたflexibleな行動を生み出しているのです。

感覚刺激(視覚刺激)を手がかりにして眼球運動を計画、あるいは抑止する、Look neuronとDon’t look neuronが、このシステムを可能にしています。

<Don’t look neuronの特徴>
・Non-match taskでactivateされ、Match taskでは活動が弱い。
・Sample刺激に対しては(Non-match taskにおいて無視すべきターゲットに対しては)orientational selectivityが強いが、saccadeの方向に関しては選択性がない。
・saccadeの運動のgenerationに関わるのではなく、そのニューロンの好みの方向preferred directionに対するsaccadeを抑止suppressionする機能をもつ。
・saccade前のdelay periodにおける神経活動の強さ(スパイク発火頻度)を観察することでその試行でミスするか成功するかpredictableである。

以上です。ストーリーとしては明快でわかりやすいんですが、多くのデータがあってそれぞれ何を表しているのかよくわかんないのがあるとどんどんこんがらがってきたりして…sweat02
そうやって何回も読み返しながらやっているのでものすごい時間かかってしまいます。まあたくさん読んで少しずつパフォーマンスをあげていくしかないですね〜typhoon

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PFCの役割

今実習で京都に来ていますbullettrain
C言語のソフトをいじったり、実験いろいろ見たりと、いつもの臨床実習よりとても充実した時間を過ごしています。

今行われている実験について、ここで書けないのが非常に残念ですが、とってもおもしろそうです。僕は単に視覚よりも視覚を手がかりにした高次の脳機能の研究が好きなので、そういう感じのは話聞くだけでワクワクしますcancer

今週は祇園祭も楽しみですhappy02

あ、でもその前に…
論文を2本もらって、『水曜までに読んどいて!』と言われたのでとりあえず緊急に読みます。2本目は間に合わないかも…sweat02

<Top-Down Attentional Deficits inMacaques with Lesions of Lateral Prefrontal Cortex>  
Andrew F. Rossiら
『外側前頭前野損傷サルにおけるトップダウン注意の障害』

attentionは、top-down attentionとbottom-up attentionの2種類に大別されることが知られています。Bottom-up attentionは視野の中で、他の物体と明確に区別される特徴を持っていることでpop-outする(目立つ)物体を認識する過程であり、受動的な注意であると言えます。
Top-down attentionは、対象となる物体に対し、内的に(自分の必要に応じて)目標とする特徴を決め、その特徴に基づいてある物体を選択し、他の物体より目立たせることで、その物体に対して様々な処理を速く、重点的に行えるようにする過程で、能動的な注意と言えます。
視覚経路を会社に例えれば、top-down attentionは社長から『この美容器具を売りつけるために、20代独身女性の家を探してこい!』と命令が下り、部長や課長を介して営業マンに伝わり、視野の中に営業に出かける…こんな感じでしょうか。
Bottom-up attentionは、営業マンが『課長!なんかこの美容器具をいくらでもいいから買いたいって人がいますよ!』と上司に報告し、それが単に1個だけ買う客なら課長どまりなのが、もし法人の大口の客だったりしたら最終的に社長の耳にも届き、会社全体の話題になる…つまり意識にのぼるというような感じでしょうか。
今適当に作ったたとえなのでまあいろいろ矛盾あるかと思いますが
もちろん両者は完全に干渉しないわけではなく、この2種類を同時に使うことで、『視覚株式会社』が成り立っているわけですね。

さて、今回の論文では、prefrontal cortex(PFC)のlesionによる影響についていくつかの実験が行われました。
先行研究でPFCは様々な反応の調節に関与することが示されており、視覚処理にはbottom-up attentionと頭頂・前頭からのtop-down attentionによる制御が働いていると考えられていました。
そのため本研究では、PFCはtop-downとbottom-upのどちらの機能を持つのか、またそれはどのような働きかということが調べられました。

図なしなので簡潔に。
<実験1>
中心の点を固視したまま、周辺視野の○の中にある棒の向きに注意を向ける。
中心の点は色付きで、同じ色の○を選んで注意を向ける必要がある。
例えば、中心点が緑、刺激は赤、青、緑の3つ、という場合、サルは心の中で『緑、緑』と思いながら(?)緑の棒が入った○に注意を向け(眼は中心に固視)、棒の向きが垂直ならレバーをはなし、それ以外の向きならレバーは握ったままにする。これでrewardのジュースをもらえる。
<実験2>
中心の点の色は実験1と違って一色のみ。同じく周辺視野に○が出るが、今度は1つの○だけ違う色の棒で、あとは全部同じ色の棒が入っている。
例えば、赤の棒入りの○が4つと緑の棒入りの○が1つというように。
今度は中心点と関係なく、色が1つだけ違う○を選び、棒の向きが垂直ならレバーをはなせばよい。
<実験3>
実験1と実験2では刺激は縦に並んで呈示されたが、実験3では1個の○を囲むように3つの○が並べられる。この一塊がランダムにいろんなとこに出る。
実験3だけは白黒で、真ん中の○には棒が入っているが周りの○はただの白い○である。
白黒の○のコントラストを調節し、その影響を見る。

実験1は内的な情報を元に選択を行うので、top-down attention課題であると言えます。
実験2は色の違いによりpop-outした刺激を検出するだけなので、bottom-up attention課題です。
実験3も1つしか棒がないのでbottom-up型ですが、コントラストの調節によって見えやすさを調節することができます。
また、実験1と実験2においては、繰り返し呈示の回数を変化させました。繰り返しの間は同じ色に注意すればよく(刺激の出る場所は変わるが)、繰り返しが多いほどサルも慣れるので簡単に答えられるようになります。繰り返しの回数は1、5、10,100の4種類でした。繰り返し1というのはつまり、緑の次は赤or青というふうに、必ず次は違う色が出てくるということです。
今回は右のPFC障害であるので、逆側の左側の視空間をlesion側、右側の視空ほど、正解率が高く、大きいほど正答率が低かったと言えます。

結果ですが、まず実験1について、lesion側とcontrol側を比較すると、lesion側のorientation thresholdが有意に大きい、つまりlesion側で機能低下が見られました。反応時間についても、lesion側のほうが長く、処理に時間がかかっていることがわかりました。
実験2においても、lesion側とcontrol側で有意差が認められました。しかしlesion側とcontrol側のorientation thresholdの値の差を実験1と比較すると、有意に小さいことがわかりました。これはつまり、実験2の条件のほうが、lesionによる影響が小さいことを意味します。
以上から、lateral PFCの役割は、top-down attentionがメインであると言えます。

次に繰り返しの回数による解析についてですが、実験1で、lesion側において、繰り返しの数が大きくなるほど、orientation thresholdは小さくなりました。Control側では繰り返しによる影響は見られませんでした。
実験2では、lesion側とcontrol側を比較して繰り返しによる影響に有意差は見られませんでした。
このことから、top-down attentionで繰り返しが小さい場合、つまりtargetの色が次々と変化する場合に、課題の正答率の変化が強く見られていると言えます。

実験3において、顕著度saliencyによる影響ついて検証するため、targetとdistracterのコントラストを調節したところ、コントラストを変化させてもlesion側の処理に変化は見られませんでした。
この結果は、先行研究でV4とTEO(temporal-occipital area)のlesionで見られた結果と異なるものでした。V4とTEOのlesionでは、コントラストの減少によって課題遂行パフォーマンスの低下が見られたのです。

これらの結果より、PFCはtop-down attentionを主に担当する部位であり、中でも特に頻繁に変化する刺激への対応をするという機能を担っていることがわかります。
また実験3の結果、特にV4やTEOとの違い(コントラストを感知しない点)からは、PFCがtop-down attentionを担う単一の部位なのではなく、周辺領野と連携しtop-down attentionを形成していることを示唆します(PFC単体では色に関しては指令を出せてもコントラストの違いに関して指令を出せないので)。
また他のイメージングなどによる研究においても、PFC損傷後に非常に短期間でtop- down attentionの機能が代償されるという報告があり、今回の結果とも一致する見解(PFCは大きなtop-down attentionのnetworkの1つであるという考え)を支持するものです。
ただし、PFCはtop-down attentionの中でも頻繁に変化する刺激への対応という、役割を持っており、これは長期的にも代償不能なもので、PFCのよりcriticalな役割を見いだしたことが、今回の研究の最も強調すべき点です。
本研究においてPFCの役割が明快に示されたことは、過去の研究におけるIT野lesionでの物体認識障害、MT野lesionにおける記憶障害などに匹敵するものだと筆者は述べています。

以上です。

あ゛〜夜が明ける…あと1本読まなきゃ〜sweat01

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ミラーニューロン 〜こころの発達〜

あくびしてる人を見たら、つられてあくびをしてしまったりとかgawk、泣いている人を見てたら自分は何も悲しくないのに涙が出てきたりとかcrying、そういう経験ってありますよね?

意識的に他人の行動をまねて同調を示すのと違って、無意識に同じしぐさや行動をしてしまうことってありますよね。

それによって、ちょっと恥をかいたりすることだってあります。2人同じしぐさで頭かいてたりしてsweat01

こういった 『無意識に他人の行動をまねる』 ことって、わたしたちにとって何の意味があるんでしょうか?そもそもどういう仕組みでこういったことが起きるのでしょうか??

僕は以前から、こういった無意識の同調は、学習に関係しているのではないか、と勝手に思っていました。

この無意識の同調は、幼児が大人の行動をまねて知識を獲得していく過程の名残りで、このような行動がしっかりと見られる人は、社会に適応する能力が高く、動物個体としての生存能力に優れた人なのではないか、と。

また、そういった社会的な利益を追求する本能的な仕組みに、このような行動が何らかの形でリンクしているんじゃないか、と。

動物としては群れの中にいられるほうが生存に有利だし、繁殖にも有利だしflair

まあそれが正しいのか見当はずれなのかどうかはさておき、この無意識に同調する、いわゆる共感(empathy)という行動が、人間にとって何か重要な意味を持つんじゃないかな〜と思い、気になっていたのです。

さて、そこで今回勉強するミラーニューロンです。

ちょうどその気になってたempathyとか学習とか、そういった謎の解明に役立つかもしれないっていうことで、ちょっとこれは調べてみなきゃって思いました。up

とりあえずWkikipedia(English)のMirror neuronの項目を見てみます。ヒトのまねをしてベロを出すサルの赤ちゃんのカワイイ写真があるので是非見てくださいhappy02

mirror neuronは、1990年代にイタリアのUniversity in Parmaの研究者であるGiacomo Rizolattiらによって発見されました。

当時彼らは、サルが目の前の物体を手で持ち上げるときの神経細胞の活動を記録する実験を行っていました。

その実験の中で、彼らはいくつかの神経細胞が、実験者である人間が同じように物体を持ち上げるのをサルが見ているときにも、サル自身が物体を持ち上げたときと同じように活動をおこすことに気づきました。

これらのニューロンは実際に自身が行動するときも、その行動を観察しているときも、鏡のようにそっくり同じ活動パターンを示すので、mirror neuronと呼ばれました。

mirror neuronは単一神経細胞としてではなく、ある神経細胞の集団として一つの行動を表現していると考えられます。

ニューロンの組み合わせによって無限に様々な行動を表現できます。

これらのニューロン群は、サルでは下前頭葉と下頭頂葉に存在することが確認されています。

ヒトのfMRIやTMS、EEGなどのイメージングを使った実験では、ヒトの脳でも同じような場所にmirror neuronが存在することが示唆されています。

ということは、サルである程度このmirror neuronの機能や働きがわかれば、ヒトに関してもある程度予想がたってきますね。

mirror neuronの機能(mirror system)として、いくつかの可能性が示唆されています。

<行動の意図(intention)の理解>

Rizolattiと共同で研究してたFogassiらが、2005年にinferior parietal lobu(IPL)でとった記録で、彼らは2つの条件を比較しました。

いずれも実験者のヒトが行い、1つめは『リンゴをつかんで、口元へもっていく』という動作(grasp-to-eat conditon)。2つめは、『(食べ物ではない)物体をつかんで、カップに入れる』という動作(grasp-to-place condition)。これらで別々のニューロン群が活動しました。

逆の条件として、『リンゴをつかんで、カップに入れる』という行動を見せた場合は、grasp-to-eat conditionのときと同じニューロン群が活動しました(手の動きは、grasp-to-placeであるにもかかわらず)。これらの結果から、腕の動きに関係なく、つかむ対象がリンゴかただの物かによってその後の行動を予測している(to-)ということが言えます。

つまり、行動の目的、意図が、IPLでニューロン群として表現されていると言えますし、またこれらのニューロン群が学習によって形成されることもわかります。

 

<言語の獲得>

mirror neuronが発見された領野であるinferior frontal cortexはBroca's area(運動生言語中枢)に近接しており、mirror neuronがimitationによって行動を獲得する過程に関わっている可能性と合わせ、言語の獲得にも関わっている可能性が考えられています。

神経科学者として有名なV.S.Ramachandoranも、mirror neuronが言語獲得に重要な意味を持つ可能性があるとして大きな期待を寄せていたらしいです。

言語の獲得のための神経システムについては様々な憶測があり、このmirror neuron説もエビデンスに乏しいです。

<共感(empathy)>

mirror neuronが感情の共有に関わっていると考えられています。

anterior insulaとinferior frontal cortexで、自身がある感情(怒り、喜び、痛みetc.) を感じているときと他者のそれらの感情に関連する表情を映像で見せられたときに同じように活動するニューロン群があるからです。

またKeyserらにより、自己意識の高さの指標となるテストで点数が高い(より他者に共感的である)ほど、mirror system のactivationが強かったという報告があります。

ここで注目したいのは、emotionに関連するmirror neuronだけでなく、hand actionに関連するmirror neuronについても、同じように強いactivationが見られたということです。empathyもactionのimitationも本質的に同じシステムが関与している可能性を示唆しています。

ただしこれらの実験結果は手の動きの実験とは逆にサルにおいて確認しにくいので(サルの感情を正確に把握するのは難しいので)、証拠不十分です。

<自閉症(autism)との関連>

非自閉症児においては、運動野における神経活動は、他者の運動を観察している間は抑制(supress)され、mirror neuronがactivateします。

しかし自閉症患児においては、このsupressionが起こらないそうです。つまり患児の脳内では他者の動きと自身の動きの区別がつきにくい状態であるということが考えられます。

また、自閉症の患者では、mirror neuronの働きが弱い可能性が、イメージング実験から示唆されています。

自閉症においては、共感や心の理論(後述)、社会的な協調能力に損傷が見られるのが特徴であり、これらの症状とmirror neuronの活動性の低下との関連が注目されています。

加えて、mirror neruronのactivity levelと自閉症の重症度が負の相関関係にあるという報告もあるようです。

これも自閉症の病因に関する数ある理論の一つにすぎないそうです。

<こころの理論(Theory of mind)>

『こころの理論』について説明します。

おかしの箱に積み木をかくしておいて、A君に中身を当てさせます。A君は当然、おかしが入っていると答えます。箱を開けて正解を見せます。中身は積み木でした。

そこで質問者が『じゃあ、(答えを知らない)B君がこの箱を見たら、中に何が入っているって答えるだろうね?』と質問します。

ここで私たち大人は、中身を知らないB君は当然『おかし』と答えるだろう、とわかるわけですが、『こころの理論』が未発達な幼児は、『(B君は)積み木(と答える)』と答えます。

つまり『こころの理論』とは、他者の考えていること(他者の欲求、信条などを含め)を推量する能力であり、発達の過程で培われるものです。

また、simulation theoryというのがあって、これは他者の考えを理解するということは、自分をその他者に置き換えて考える(シミュレーションする)という過程に基づいて成り立っている、という理論あり、これでこころの理論という能力を説明できるという考えがあります。

simulation theoryはmirror systemの発見より10年前からありましたが、今ではmirror neuronの登場によってsimulationが行われると解釈されるようになっています。

以上です。また何かいい関連論文あったら読んでみます。

まだこのwikipediaの記事だけだと、不明確なところが多かったです。

intentionだって、それぞれのニューロン群は単に対象の物体そのもの(リンゴか物体か)をコードしているのとは違うんだってことをちゃんと検証してるのかな〜とか、ヒトについての実験で『共感の強さをみるテスト』がどれだけ信頼できるのか疑問だし、、、

まあこのへんの感情とかが関わってくるところはどうしてもすっきりと解決はしないでしょうね。まずは動きをまねるところから少しずつ解明していくしかないと思います。

mirror neuronは90年代に華々しく登場して話題になったのにいまいち目立った進展がないようで、、、なんでだろう??

やっぱこういう感情とか関係する研究は、サルではタスク組みにくいし、ヒトでは解析がしにくいし、、二重のジレンマがあるんでしょうか。。

こういった感情とかより高次のことに関わってくる分野はとてもおもしろくて個人的に大好きですshine


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カエルが虫を見つけるシステム

“Anatomy and Physiology in the Frog (Rana pipiens) of Vision”
<PMID: 13768335>

今回は、LETTVINの1959年の論文を紹介します。なんと50年前の論文ですup
カエルの視覚を解剖学的に調べることで、カエルの視覚システムについて考察した論文です。
カエル、、最近の子供は見たことない子も多いんでしょうね〜。僕は子供のとき鳥取に住んでいたので、近所の田んぼとか溝にいくらでもいましたtyphoon

カエルが虫をつかまえるとき、手がかりとするものは、視覚です。ギョロッとした2つの目で見て、狙いを定め、一瞬のうちにベロをのばしてパクっと獲物をとらえます。
またカエルの捕食にはいくつかの法則があります。
 1、止まっているものには反応しない。
 2、小さな動くものには捕食行動をおこす。
 3、大きな動くものには逃避行動をおこす。
ここから、カエルはどうやら対象となる物体の『サイズ』と『動き』によって異なる行動をするようだ、ということがわかります。これらの法則は虫が草の上にいようが道路の上にいようが成り立ちます。晴れている日でも曇りの日でも同じ。つまり、周りの環境(景色)に左右されないのです。
ヒトの場合だと、もう少し複雑になりますが、わたしたちも同じように、周囲の環境に左右されることなく、目の前のものをその形、色、動き、大きさなどから判断し、的確に行動することができます。

捕食も逃避も、どちらも生存にはかかせません。エサ食べないと死ぬし、逆に間違えて敵にベロをのばしていたら食べられてしまいますからwobbly

普段あまりにも当たり前にやっていることなのでなかなか意識しづらいところですが、よくよく考えるとカエルはすごいことをやっているんです。
だって目の前の景色から『標的』を認識し、しかもその標的をカテゴリー分類して行動を選択するという一連の流れを瞬間的に行うのですから。最新のデジカメより精密ですcamera

視覚情報を最初に処理するのは、眼球の中にある網膜(retina)です。網膜には色を感知する神経細胞(視細胞)があり、これらがまず視覚情報を生データとしてパラメータにして表現します。真っ白の空間に真っ黒の点があれば、たとえば

  1111111111
  1111551111
  1111551111
  1111111111
  1111111111

なんて表現されているかもしれません。まあ実際には色はもっと複雑なので、この網膜の生データだけではエサや敵がどこにいるのかよくわかんないです。背景に色がつくと、

  2312424532
  1342342142   
  1234255221
  2312455332
  2343235343

これなら、ぱっと見はどこに点があるかわかんないですよね。ましてこの数字たちが経時的にどんどん変わって行きますし。
この数字の羅列は、さらに進んだところで解析されます。

多くの層を持つ網膜の中でより内側に分布する神経節細胞(ganglion cell)が、これらの生データの変換を行っています。

この論文では視蓋(tectal lobe, tectum)という言葉で出てきますが、一般的には上丘(superior coliculli、SC)と呼ばれる部位があります。これは中脳の一部で、ヒトにおいては視覚反射の中継点でしかないと言われていますが、下等な生物においてこのような無意識の反射はより重要な役割を持っています。
網膜上の視覚情報の一部は視神経を伝わって、まずこの上丘にたどり着きます。

LETTVINらは、カエルの目の前で物体を動かしたときの神経節細胞の活動を記録しました。対象となる物体は明るさ、サイズ、形を様々に変え、また背景の色も変えて、反応の違いを比べました。
記録は神経節細胞の軸索の、視神経内部と上丘内部からとりました。

網膜の神経節細胞は機能的にClass1〜5の5種類に分類されます。
それぞれ直線、カーブ、コントラスト、明るさ、そして暗闇に反応する細胞たちです。
暗闇に反応するClass5の細胞以外は、すべて『動き』があったときに反応します。それぞれの細胞の受容野にそれぞれの担当ジャンルの刺激が入ってきたときに、その動きに反応して活動が起こります。上丘は4層あり、Class3とClass5は上丘の同じ層へ投射します。両方ともコントラストに関係する細胞です。
これら5種類の神経節細胞たちは、規則正しく網膜に配列しており、それぞれ上丘の決まった層へと連絡しています。

このような解剖学的特徴から言えることは、網膜のはたらきは、視覚的情報の入力を、4つの情報(直線の端、カーブ、コントラスト変化、局所的な明るさの変化)に分類し、上丘へ送信することだということです。
これら4つの情報があれば、対象のサイズを測定し、それが動きによって明るさが徐々に変化する様子をとらえることができますね。それらの情報の組み合わせによって、瞬時に運動を起こすことができるのです。

また、一瞬暗くなったときに信号が変化しないのも重要なポイントです。もし一瞬暗くなっただけで、『色が変化した!』と視覚反応が変わってしうなら、まばたきしただけで標的を見失ってしまうことになります。

このように、網膜は、モザイク状の無数の光の点を、4種類の意味のある文脈へと変換し、対象の物体と背景との関係を解析するための信号を、より高次の上丘へ送信しているのです。カエルはこうして目の前の物体に対する反応を瞬時に決定することが可能なのですね。

とりあえずこんな感じですかねー。もっとスマートにまとめれたらいいんですがdespair
まあ少しずつってことで…up


ところで全然知らないんですけど、デジカメで顔の表情とかでシャッター切るやつありますが、あれも同じような原理なんでしょうかね?dash

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