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2009年7月の投稿

夢の話。

私達にとって、睡眠は健康な生活のために必要不可欠なものです。
適切な睡眠をとらないと、免疫力は低下し、仕事の効率も低下し、また事故などの原因となることもあります。

このように、睡眠が大事だということは、誰もが認めるところです。

では、『夢』はどうでしょうかsign02

多くの人が毎日のように見ている『夢』ですが、それが何の役に立つのか、何のために私達が夢を見るのか、詳しいことはわかっていません。

そもそもなぜ夢を見る必要があるのか、という疑問だけでなく、さらに謎なのがその内容ですtyphoon

多くの場合、夢の中の出来事は非現実的で、脈絡がありません。空を飛んだり、恐竜に追いかけられたり。
これらには、何か意味があるのでしょうか。

昔から、『抑圧された願望が表象されたものだ』とか、『未来を予知する潜在能力だ』とか言われたりして、夢占いだとかもありますが、はっきりしたことはわかっていません。

そんな『夢』の役割について、いくつか考えられ得る可能性がScientific Americanで紹介されていました。

Brain conditioning
脳を刺激し、機能を正常に保つ役割があるという説。
実際に、夢を見ているREM睡眠中には、脳の特定のエリアの活動が変化したり、神経伝達物質が放出されたりするようです。

②External vigilance
睡眠中に周囲の危険を感知できるようにしておくため、視覚および運動以外の情報(匂い、音など)に限定して感知できるような状態で、脳が充電しているという説。
夢が、視覚・運動情報だけで、匂いや音などの情報に乏しい点に着目しています。

③Threat simulation theory
これはもうそのまんまで、夢の内容は現実世界での危険のシミュレーションになっているという説です。
ある調査では夢の内容として最も多いのが追われる夢で、追いかけられたり襲われたりするのはたいてい本人だそうです。

④Costly signaling theory
ガゼルの群れがヒョウに襲われるとき、1頭の健康な若いガゼルが突然倒れ、みんなの身代わりになることが知られています。これは、1頭だけが犠牲になることが種の存続に貢献することとなるため、そのような状況で敢えて不利な行動をとるように遺伝的にコードされた行動と考えられています。
この説は、『夢』がcostly signalとなり、悪夢のあとに気分がどんよりして他者と関わりたくなくなってしまうことで、遺伝的にcostly signalが組み込まれている人が、客観的に見て不利な行動をとるようになってしまうのだ、というものです。

⑤Problem solving
わからなかったなぞなぞの答えが、夢の内容がヒントとなって正解できた、というように、実際の問題解決に役立つという説です。ベンゼン環の話なんかは有名ですね。

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これらの説は、夢というものが現実世界でどのように役立っているか、また進化の過程でどのように貢献してきているのかという観点で考えられています。

どの説もおもしろいのですが、あまり説得力はありません。悪夢はなんか説明できるんでしょうが、じゃあ楽しい夢、現実みたいな普通な夢は何なんでしょうか。

高度に進化した視覚系の副産物なのか、それとも何か役に立っているのか…確かにデジャヴみたいなことはありますが、だからその場で正しく行動できるというわけでもないですし。

先天全盲の人の夢はどんな感じなのでしょうか。あとヒト以外の動物の夢はどんななんでしょうかcat

個人的に気に入ったのは、

『夢は、スクリーンセーバーのようなものpc
という例えです。

『それが写っていること自体がメンテナンスとしての意味であり、内容に意味はない』

と。

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文献紹介の日。

僕の研究グループでは毎週金曜日に恒例の抄読会(文献紹介)があるのですが、今日は人が揃わなくて中止だったので、ここで紹介したいと思いますtyphoon簡単めに。

Dynamic Encoding of Responses and Outcomes by Neurons in Medial Prefrontal Cortex

Luk CH and Wallis JD, J.Neurosci, 2009

これは、自分の行動(Response)と結果(Outcome)がどう結びついているのか(RO association)を評価し、次の行動へ還元するための仕組みの研究です。
MPFC(前頭前野内側部)とLPFC(前頭前野外側部)からニューロンを記録しています。
MPFCは、先行研究から、報酬系との解剖学的結合も強くRO associtationに重要なことが示されています。しかし、先行研究では報酬のあるorなしの2値のみで調べられていて、そのニューロン活動が特定の報酬をコードするのか、あるいはもっと一般的な報酬価値を表現しているのかわかりませんでした。
また、LPFCのほうはというと、今まではルール変更やワーキングメモリに関する研究がメインで、RO associationに関係しているかどうかははっきりしていませんでした。
そこで、今回は、特にRO associationに重点を置き、MPFCとLPFCを比較しながらその役割を調べています。

被験者のサルに行わせた課題を簡単に書くと、
1、    レバーを右に倒すとリンゴジュースが少し出る(右=リンゴ)
2、    次に、レバーを左に倒すとオレンジジュースが少し出る(左=オレンジ)
3、    好きな方にレバーを倒す→右ならリンゴ、左ならオレンジの、上記の2倍量のジュースを得る。
で1トライアル。1,2がサンプルで、3がチョイスとなります。
ジュースは3種類(オレンジ、リンゴ、キニーネ(=薬))で、サルははっきりとした好みを持っていて(Fig1C)、そこからランダムに2つがサンプルになります。
サルは好きなジュースをたくさん得るために、レバーの方向(Response)とサンプル(Outcome)の関係(RO association)を記憶しておく必要があります。

最初のサンプルが出る前、1回目のレバー押しでサンプルを得たとき、2回目のレバー押しでサンプルを得たとき、そして最後にチョイスでジュースを得たときのニューロン活動を主に解析しています。

まず、1回目のレバー押しでサンプルを得たときの活動を見ると、2種類の反応が見られました。1つめはResponseタイプで、レバー押しの方向によって活動が変わるもの(Fig3A)、2つめはOutcomeタイプで、ジュースの種類によって活動が変わるもの(Fig3B)、そしてもう1つはResponse-Outcome interactionタイプで、両方の要因で活動が変わるタイプ(Fig3C)です。課題の遂行にはResponseとOutcomeの両方の情報が必要となりますが、MPFCでは両方のタイプのニューロンが同じくらいの割合で存在していたのに対し、LPFCではOutcomeタイプが少ないということがわかりました(Fig3A~C)。

Outcomeタイプの特徴として、嫌いな順に活動が高くなるニューロンが多かったのですが、2回目のサンプルのときにも同じように活動するものはわずかでした。
Responseタイプは方向選択性の強さを示すdirection indexを計算して解析し、1回目のレバー押し方向と最初のサンプルが出る前の活動で相関があることがわかりました。しかしこれはチョイスのときまでは続きませんでした。

これらの結果から、MPFCはRO associationに必要な情報を表現しているが、最終決定の過程は別の部位で行われていることが考えられました。

次に、2回目のサンプル期間についての解析では、1回目のサンプルのジュースが好きなものだったとき、2番目に好きなものだったとき、3番目だったときの3パターンにわけて調べました。
この期間の活動をみると、Fig7Aのようにキニーネのときに活動が高くなるもの、Fig7B,Cのように嫌いな順に活動が高いもの、Fig7Dのようにサンプル2つの組み合わせに特異的に活動するものが見られました。トータルでみると、1回目のサンプルが2番目に好きなジュースだった場合に2回目サンプル期間の活動が強くなる傾向が見られました。これは、1回目のサンプルがもし1番好きあるいは1番嫌いなものであればその時点でチョイスが決まるのに対し、2番目に好きなジュースだった場合、2回目のサンプルを吟味することが重要になるからだと考えられます。

そして次にチョイス期間の活動の解析ですが、ここではチョイスのときのジュースの量を変え、たくさんジュースが出るトライアル(Large reward)を混ぜます。ジュースは細い管から同じ速度で出るので、Largeのときには2倍の時間ジュースが出ることになります。サルはLargeかSmall(ふつうのトライアル)か予測できません。
ここで、Smallのジュースが出終わった直後の期間(Small-offset)に、活動が大きくなるニューロンが多く見られました(Fig8B)。このSmall-offsetでの活動はサンプルのときと同じくらい強かったです(Fig8E)。
また、サンプルのときと同様にジュースの種類を表現するニューロンもありましたが、ここではサンプルのときと逆で、好きな順に活動が強いものが多く見られました(Fig8A,C)。

この結果から、サンプルの期間、そしてSmall-offset期間という、覚える必要性が高い期間の活動が高いことがわかります。

Fig9は解剖学的な解析。LPFCではResponseタイプは後方に多く、Outcomeタイプは傾向みられず。MPFCでは特に傾向がありませんでした。
また、MPFCの後方を新たに記録し別に解析したところ、LPFCと同じようにResponseタイプの割合が高いことがわかりました。

以上、結論としては、MPFCは行動とそれによる報酬の価値のモニタリングにおいてLPFCより重要であり、行動(およびエラー)の評価、意志決定のプロセスに貢献している、ということです。

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報酬の価値を表現するニューロン活動がサンプルとチョイスで逆転していたのは何故なのでしょうか。そしてMPFCで別々のニューロン集団によって表現されたResponseとOutcomeの情報はどのように統合され維持されるのでしょうか~spa

最近は、前頭前野(PFC)でも内側を扱った研究が多いですね。上記のような報酬系との関係に加え、時間のコード、行動のタイミングなど。
LPFCとMPFCは、階層的に報酬の情報を処理しているのではないかという報告もあり、気になるところです。

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