音楽てんかん
"Musicophobia; When your favorite song gives you seizures"(Scientific American, June 9, 2008より)
"Musicophobia"ー 直訳すれば「音楽恐怖症」です。ここでは、あるアメリカ人女性の例が挙げられています。
彼女は流行りのアイーティストのCDを聞き、コンサートに行き、自身も教会でコーラスに参加するほどの音楽好きでした。
しかし22歳で原因不明のけいれん発作を起こすようになり、やがてその発作の引き金となるモノの存在に気付きます。
それはなんと、驚くべきことに、音楽、それも「彼女の好きなジャンルの音楽」だったのです。
けいれん発作を誘発しやすい典型的なものとして、不眠状態、光刺激などが知られています。
彼女の場合はこれらでは全く発作が誘発されず、ヒップホップ、R&Bなどジャンルを問わず彼女の好きな曲を聞くことで即座にけいれんが起きました。
ジャズとクラシックは、彼女が興味を持たないジャンルでしたが、これらを聞いても一切発作は起きませんでした。
流行りの曲は彼女の好きなパーティーやコンサートのみならずショッピングセンターやレストランなどでも聞こえてくるので、彼女はショッピングにも行けなくなり、やがてケータイの着メロにも悩まされ、ついには学校もやめてしまうことになります。
クラブやコンサートで大音量の音を聞くことにより(光刺激も相まって)、興奮が高まり発作が誘発される、あるいは音楽を愛するあまり好きな曲に対して過剰に興奮するために誘発されるということなら考えられなくもなさそうですが、彼女の場合、曲が聞こえてからわずか数秒のうちに発作が始まるということなので、それだけでは説明が難しそうです。
抗けいれん薬による治療に抵抗性だったため、彼女はついに脳の一部を切除する手術を受ける決意をします。検査の結果、神経細胞の過剰な興奮が起きている場所は、右耳の後下方、音情報の処理に関わり、また感情や記憶の形成にも関与するとされている部分でした。
手術は無事成功し、術後も目立った副作用はなく、けいれん発作は全く起きなくなりました。
こうして彼女は、コーラスにも復帰することができ、再び音楽を楽しめるようになり、また数学の先生として働くことができるようになったそうです。
「この病気になって、世界がどれほど音楽で溢れているか気付かされた」
彼女はこう言っています。それは発作への恐怖であると同時に、音楽好きな彼女にとって非常にアイロニカルな驚きでもあったことでしょう。
さて、このように好きな曲でのみけいれんが誘発されるというのは非常にまれなケースですが、"Mugicogenic epilepsy(音楽てんかん)"というものは以前から症例報告が挙ってきています。
特定の人の声で発作が誘発されるケースなどもあるようです。
一説によれば特定の周波数帯域関連部位が刺激されることによるということも言われますが、これだけだと「好きな曲」以外で発作が起きないことは説明できません。
この曲が「好き」という感情がトリガーとなるのか、あるいは発作を誘発する特定のリズム、声質、ドラムの音など何らかの要因があり、それと自分の好きな曲が偶然リンクしていただけなのか。
音楽は、大脳辺縁系の報酬系を賦活し、他の快楽刺激と似たように作用していると考えられています。それに、音階を聞き分ける能力は、ほとんどヒトに特異的なものです。遥か数万年前から、文化や人種、時代を超え、音楽が奏でられてきたということは、根底に共通のシステムがあるからでしょう。
好みの音楽が人を癒し、言語の壁を越えたコミュニケーションツールとして使われ、発達をも促進する側面がある一方で、理想の音を追求することで精神的ダメージを負う、あるいは今回のようにてんかんを起こしてしまったケースもあるということで、改めて音楽と、人間との深い関わりを感じたのでした![]()
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コメント
こんにちは!
お久しぶりです♪
‘音楽てんかん’というのがあるのですね・・・!!!
びっくりしました!
しかも好みの曲を聴いて・・・というのだから、本当に驚きです。
また、こういうお話がありましたら、是非教えて下さい♪
それから、初めてのお役職、おめでとうございます!!!
良かったですね
がんばって下さい♪
あ、旅行も本当に楽しそうですね~♪
リアルに「世界の車窓から」・・・というのも面白かったです~!
私もバタバタしまくっておりますが、がんばりま~す♪
投稿: 音と風 | 2009年3月18日 (水) 17時52分
お久しぶりです、コメントありがとうございます
好きなことでこんなに辛い思いをするなんてすごく悲しいですよね。スポーツとかならわかりますが、ただ曲を聴くだけで起こるなんて驚きでした。
いろいろ忙しい時期だと思いますがお体に気をつけて頑張ってください
投稿: atsushi | 2009年3月19日 (木) 13時42分