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2008年11月の投稿

Anton症候群

後頭葉occipital lobeには視覚野が存在するので、両側の後頭葉が広範に障害されると、視力は全く失われ、皮質盲cortical blindnessと呼ばれる状態になります。
このように広い範囲の皮質盲が突如として起こることにより、患者は自己の盲目を自覚せず、時にこれを否認することがあります。
このような盲目否認はAnton, G. (1899)らによって記載され、アントン症候群 (Anton-Babinski syndrome, Anton’s syndrome)と呼ばれています。

稀な病態であり、詳細に記述された教科書や文献は非常に少ないです。僕はつい最近知りましたsweat02

アントン症候群は、一種の病態失認agnosiaと考えられています。つまり、自分の障害を認知できない状態、ということです。患者は、自分は見えていないということを認めず、『自分の視力に問題はない』と言いますが、各種の視力検査では完全な盲目であることが証明され、またその行動を観察しても、盲目であることは確実です。患者がまるで見えているかのように振る舞うので、盲目になっても周囲の医療スタッフがそれに気付くのに数日かかった、なんていうエピソードもあります。

このような病態は、いわゆる盲視blindsightとは逆の病態として記述されます。盲視とは、患者は『見えない』といいながら、視覚を頼りに行動することができるという特殊な病態で、やはり後頭葉の損傷が関係していると考えられています。

精神科の専門書を見てみると、このような病態失認について、皮質の大きな障害による性格変化、盲目への適応障害により心理的防衛手段として『見えている』と作話をするのである、という記述が散見されます。

しかし、アントン症候群の病態が成立する機序について、他にもいくつかの可能性が考えられます。

1つは、皮質の損傷から、何らかの機序により、外界から入る視覚情報と内部の情報との区別がつかなくなり、聴覚などの情報から内部で作り上げた情報をあたかも目を通して見た情報のように錯覚を起こすという可能性です。アントン症候群の患者に『私のネクタイの絵を描いてください』というと、本当はネクタイをしていないのに、患者はネクタイを描くそうです。

さらに他の考えられ得る説として、アントン症候群が、病態だけでなく機序としても盲視と全く逆に起こっている可能性も挙げられます。

つまり、視覚意識の経路が正常で、視覚情報処理により行動に関わる経路が障害されている、ということです。

もし仮にこの仮説が正しければ、視覚意識を生み出す領野、あるいは経路がどこかにあるとして、その『視覚意識経路』は、視覚意識を作るために後頭皮質からの入力を絶対必要とはせず、かつ視覚情報に基づく行動のための処理にはほとんど関わらない、ということが言えます。

そのため、後頭葉が完全に障害されて視覚情報を利用できない状態において、視覚意識のみが生じ、患者はその感覚のみを有する、と。

これなら、患者は嘘でも作話でもなく、事実として『見えている』と感じますが、視覚を使った行動は出来ません。

この考えは何ら実験に基づかないもので、全く根拠はありませんが、僕は常々、精神科領域における患者の意識の変容を『作話』や『妄想』と片付けてしまうことに疑問を感じています。

精神疾患において幻想のような感覚が浮かんでくる感じは、通常我々が感じているクオリアが感じられる感覚に非常に近い気がするんです。正常で、普遍に感じられるこの感覚も、所詮は主観的で、内側の情報を処理したものなのですから。

このような病態失認は、意識について考える上で重要なキーワードになる可能性があると思います。少なくとも、『心理的要因だ』と片付けるべきではないと思います。

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SNr→SC

久し振りに論文読んでみたのでメモですsun

Substantia nigra stimulation influences monkey superior colliculus neuronal activity bilaterally.

(黒質の刺激により上丘は両側性に影響を受ける)

Liu P, Basso MA.

SNr(黒質網様部)の電気刺激により、SC(上丘)のニューロンの抑制が強化され、サッカード(急速眼球運動)が影響を受けたという話です。
SNrとSCへのdirect projectionの機能、そしてSNrから対側SCに投射する経路についてあまり調べられていなかったということで調べてみたということです。

substantia nigra(黒質)は、脳の中でも奥のほう、脳幹の上あたりにある神経核で、大脳基底核basal gangliaの1つです。
Brain_structure_3  
大脳基底核の重要な役割として、抑制性の信号を視床や大脳皮質などに送ることにより、運動などを抑制性にコントロールするということが挙げられます。
黒質は網様部(SNr)と緻密部(SNc)に区別され、SNrはこの大脳基底核の出力部です。
Basalgangliaclassic
一方、superior colliculus(SC; 上丘)は、視覚経路の中でも一次視覚野へ向かう経路とは主に別系統で投射を受け、意識下に眼球の運動を制御しています。SCのニューロンには、サッカード(急速眼球運動)に先立って発火する、buildup neuron (prelude neuron)と、サッカードが開始してから発火するburst neuronがあります。
buildup neuronはまだ眼球が動いていないときに既に発火を始めているので、サッカードの準備に関わっていると考えられます。

この研究では、このSCのbuildup neuronの神経活動が、SNrの電気刺激によってどう影響されるかが調べられました。

実験課題として、visually guided delayed saccade taskが用いられました。これは、targetが出現してもfixation point (FP)を固視し続けなければならいことが教示され、FPが消えたことがcueとなり、そこで初めてtargetへ眼球運動するというものです。

この研究ではこのdelayed saccade taskでcueが出た瞬間(=FPが消えた瞬間)にSNrの電気刺激を開始します。

結果としては、SNrにelectrical stimを加えたときに、加えないときより有意なSC buildup neuron発火頻度の低下が見られました。
しかも、片側半球のSNr刺激で、両側半球のSCにおいてbuildup neuronの抑制が見られました。
また、サッカードそのものに関して、潜時は長くなったものの、眼球運動の速度、到達地点などに有意な変化は見られませんでした。

発火頻度の減少が単純にサッカードを抑制したりサッカードの大きさ(振幅や速度)を減少させるわけではなかったことから、SNrは考えられているより複雑にSCを制御していることが示唆されました。

***************

僕の興味はより高次の機能にあるのですが、こういった論文を読んでいると、例え高次機能に関するテーマでも、基底核やら辺縁系やら小脳やら、必ず絡んでくるから、関係性をしっかり吟味しなくてはならないんだなーと気付かされますflair

あ、卒試無事にpassしましたnotes  たぶんギリギリです。きつかった〜sweat01

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かぜについて。

卒業試験の呼吸器内科の問題ですcancer

かぜ症候群について誤っているものはどれか。1つ選べ。
a (略)
b (略)
c (略)
d 発熱は、感染に対する正常な生体反応である。
e かぜ症候群では、ウイルス性でも細菌感染予防のために抗菌薬を併用することが望ましい。

さて、この問題、まずどう見てもeが間違いです。
かぜ症候群、つまり一般的に言う『風邪』の原因は、ライノウイルスという、『ウイルス』です。
ウイルスには、抗生物質(=抗菌薬)は効果がないばかりか、無駄な抗生物質の使用により、耐性菌の蔓延を助長してしまいます。
抗生物質は、細菌感染が特に疑わしい場合に使用されるべきです。

よく、外来で、風邪引いたから抗生剤くれ、という患者さんがいますが、これは全く効果がないばかりか、むしろ悪影響なわけです。
しかし、風邪は、だいたいほっとけば数日で治るので、患者さんとしては『抗生剤飲んだら治った』と誤解して、また次も使いたくなるわけです。

医者の側としても、特に開業医の先生方としては、患者の頼みを断って悪い印象を与えたくないということで、わかっていながらも処方せざるを得ないのですdown


まあそんなダークな話は置いといて、dの選択肢はどうでしょうか。

特に医学の知識がなくても、『風邪っていうのは、悪いバイ菌が外から入ってきて、それを追い出すために体が頑張って戦ってるんだよ』と親や保健室の先生から教わったりした人も多いと思います。
つまり、熱や咳や鼻水などは、からだがバイ菌を追い出している『正常反応』であると。

しかし、たまたま試験数日前に、Yahooニュースでたぶんこの論文に関する記事を見ていたので、dの選択肢で戸惑ってしまいました。


Gene expression profiles during in vivo human rhinovirus infection: insights into the host response.

Proud D, Turner RB, Winther B, Wiehler S, Tiesman JP, Reichling TD, Juhlin KD, Fulmer AW, Ho BY, Walanski AA, Poore CL, Mizoguchi H, Jump L, Moore ML, Zukowski CK, Clymer JW. 


このカナダのグループの研究によれば、
ライノウイルスはヒトの免疫機構に関わる遺伝子部位を改変することで、異常な免疫反応を引き起こしていることがわかった、とのこと。
以下、Conclusionだけ引用。

“Rhinovirus infection significantly alters the expression of many genes associated with the immune response, including chemokines and antivirals. The data obtained provide insights into the host response to rhinovirus infection and identify potential novel targets for further evaluation.”

今まで対症療法中心だった風邪の治療も、抗ウイルス薬などを用いた治療に変わるかもしれません。

なので、dも間違いで、不適切問題かな〜と思ったのでしたtyphoon

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試験終了!

試験終わりましたcancer

4日と7日に卒業試験@旭川、5日に院試@京都という殺人的スケジュールでした。

卒試は突然傾向が変わったり、毎年過去問からたくさん出ていた教科が新作問題になったりとかなり難しく、大変でした。

ギリギリ6割いったかな…?という感じです。追試は嫌だな〜sweat01

院試の方は、英語と生物はなんとか解答欄を埋めて、面接も先生方は僕の話を興味深そうに聞いてくださり、良い感触で終えることができましたcherryblossom

旭川で大雪が降る中、飛行機や新幹線を乗り継ぎ不安いっぱいでしたが、無事に両方受験できてよかったです。

京都はまだ暖かくて、旭川とはすごいギャップでした。今は紅葉がきれいだそうで、週末は特に観光客でごった返しているみたいです。

研究室の先生方とも一緒に食事をすることができ、来年からどんなことしようか、いろんなことを考えました。早くそれなりの成果を出して、自分の研究についても発表できるようになるといいな、と思います。

とりあえず、試験期間中に散らかり放題だった部屋の掃除をして、また基礎の方の勉強も少しずつ再開していこうと思います。


タイヤも替えなきゃ…sweat02

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